JASPOレター -がんに関わる薬剤師のひとり言- 16

がんに関わる薬剤師のひとり言:JASPOレター

40代:企業

薬剤師としての原点をくれた二人の患者さん

薬剤師として歩んできた道のりの中で、今も心に深く残っている患者さんが二人いる。どちらも私の節目に現れ、薬剤師という職業の意味を改めて教えてくれた大切な存在だ。

最初の患者さんは、20年以上前、薬剤師免許を取得したばかりの頃に出会った。大学院生として民間病院で半年間の研修を受け、右も左も分からない私に、薬剤部長や先輩薬剤師、医師、看護師の皆さんが丁寧に指導してくださった。その中に、C型肝炎でインターフェロン治療を受けていた患者さんがいた。当時は禁酒が治療の大切な要素であったが、「正月にビールが飲みにくかったから、トマトジュースで割って飲んだわ」と笑って話されるような、どこか憎めない方だった。禁酒をお願いしていた私は、つい態度に残念な気持ちが出てしまったのだと思う。しかし研修最終日、挨拶に伺った私に「どこで、どんな薬剤師になっても応援しているで」と声をかけてくださった。その言葉に胸が熱くなり、未熟だった自分を恥じると同時に、患者さんの温かさに深く感動した。

二人目の患者さんは、約10年前、外来通院治療センターで担当した方だ。大学病院から民間病院へ異動し、その方が治療を始める時から半年ほど寄り添った。海外生活が長く、明るくフレンドリーで、治療以外の話題でも多くのことを教えてくださった。副作用や生活の困り事を伺いながら、毎回の面談が私にとっても学びの時間だった。転職のため病院を離れることを伝えた際、涙を浮かべながら「どんな仕事に就いても応援しているよ」と抱きしめてくださった瞬間、胸がいっぱいになった。

薬剤師は患者さんに指導する立場だと思いがちだが、実際には患者さんに育てていただいているのだと、この二人との出会いが教えてくれた。私の薬剤師人生の原点であり、今も背中を押し続けてくれる大切な記憶である。 

 

〔2026.2.25〕

 

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