JASPOレター -がんに関わる薬剤師のひとり言- 13

がんに関わる薬剤師のひとり言:JASPOレター

30代:薬局

訪問医の言葉から

5年ほど前の私は、在宅医療に毎日翻弄していました。朝は訪問医とのカンファレンス、午前中は個人宅を訪問し、午後は施設での往診に同行、帰社後は翌日の準備に追われる日々。がん末期の患者さんも多く、薬剤師としての関わり方に迷いを抱くこともありました。

ある日、よくご一緒していた訪問医がこう話してくださいました。「終末期の在宅医療はお祭りなんだよ。親戚や友人が代わる代わる集まり、患者さんというおみこしを担いでいく。医療者はそのお祭りを支える実行委員なんだ。」

その言葉を聞いた瞬間、自分の親族を看取ったときの記憶がよみがえりました。確かに、悲しみのなかにも、人生を讃え、送り出す独特の高揚感があった。患者さんとその家族にとって、最期の時間は「苦しみの場」ではなく「人生の締めくくりを共に味わう場」なのだと気づかされました。

日々の業務に追われていると、目の前の患者さんが「多くのうちの一人」に見えてしまう瞬間があります。しかし、その一人ひとりに、唯一無二の人生があります。薬剤師である私たちは、薬を届けるだけでなく、その人の人生の最終章に寄り添う存在でもあるのです。

本コラムを執筆しながら、私は改めて「患者さんとその家族が安心してお祭りを楽しめるよう支える薬剤師でありたい」と強く感じました。

 

〔2026.1.5〕

 

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