JASPOレター:06

がんに関わる薬剤師のひとり言:JASPOレター

40代:薬局薬剤師

看取り在宅での出来事

(コロナウイルス感染拡大前のお話し)
胃癌に対し胃全摘術実施し、化学療法による治療を1年頑張った居酒屋のおかみさん。

癌性腹膜炎による亜イレウス状態にて入院され、PTEG挿入およびCVポート挿入し、『余命を住み慣れた自宅で夫と共に痛みを感じることなく、安静に最期を迎えたい』と、ご自宅にて療養を開始した時から訪問薬剤師として関わりました。

訪問診療医と訪問看護師と一緒に療養支援をしている最中、居酒屋の店主である旦那さんと一緒に大好きなお寿司を摂取したことにより、PTEG チューブが詰まり、腹水と下肢の浮腫によるPTEG排液多量逆流が起こってしまい、救急搬送されてしましました。本来、飲水以外は禁止されていたにも関わらず、日に日に体調悪化している姿を見て、おかみさんが食べたがっていた大好きなお寿司を最期に食べさせてあげたかった旦那さん。
おかみさんは意識がなくなってしまいましたが、最期までご自宅にて療養を続けました。

エンゼルケアの際、生前、おかみさんが好きだった着物姿を旦那さんが見て『もう一度、プロポーズしたいなあ 』 と涙を流しておっしゃってくれました。どんな形にしろ、ご本人が望んだ療養に少しでも近づける努力をし、お役に立つことが重要だと感じる出来事でした。

旦那さんが経営する居酒屋に病院主治医、病院看護師、病院薬剤師、訪問診療医、訪問看護師、訪問薬剤師、ケアマネジャーで集まり、故人のこと、夫へのねぎらいながら、どんちゃん騒ぎをしましたとさ、
おしまい、おしまい。

 

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