50代:病院薬剤師
薬薬連携って何だろう
平成28年の診療報酬改定にて,トレーシングレポートの報告は「医師からの求め」に加え「薬剤師が必要性を認めた情報」の提供でも点数が付与されました。その後,令和元年薬機法改正において,「薬剤師が,調剤時に限らず,必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行う義務」「薬局薬剤師が,患者の薬剤の使用に関する情報を他医療提供施設の医師等に提供する努力義務」ならびに「入退院時や在宅医療に他医療提供施設と連携して対応できる薬局(地域連携薬局)」「がん等の専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応できる薬局(専門医療機関連携薬局)」と保険薬局の薬薬連携推進に係る対人業務への期待が明確になりました。
現在,薬薬連携の実態はどうでしょう。もともと,定義がない“言葉”のため,正解がなく,患者中心としたチーム医療の一つとしての認識なので,発展が見えません。
抗がん薬治療の対人業務の恩恵は,患者自宅時の薬学的安全管理の結果として生活の質の確保だと思います。そして,薬薬連携の題目は,本質的情報還元型トレーシングレポートの普及啓発に基づく結果の積み重ねなのではないかと思います。したがいまして,薬薬連携を「広域地区において,薬物療法の質向上に資する共通認識を有した情報連携の構築が維持された状態」と定義するのはいかがでしょうか。
一方,理想と現実のハザマにいるのが実務者です。特に,時間の捻出が必要です。業務過多の実情を考慮した業務効率化の議論を継続し,薬学的評価に向けた「教育資材・動画コンテンツ」「後方視的機械学習が可能となるデータ収集プラットフォームの構築」より質の向上を目指す必要を感じます。都道府県単位による薬局薬剤師会と病院薬剤師会が合同の審議を可能とする協議体を形成し,“公衆衛生の向上及び国民の健康な生活の確保”のため,建設的な標準化を図り,社会貢献への寄与がなされるといいですね。
住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための薬剤師・薬局のあり方の見直し,地域包括ケアシステムにおける薬局・薬剤師の機能強化事業が建設的に行われることを期待します。
〔2025.7.1〕